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東京地方裁判所 平成8年(ワ)24336号 判決 1999年2月26日

主文

一  原告の主位的請求をいずれも棄却する。

二  被告甲野太郎と被告甲野花子が別紙物件目録(一)<略>の建物についてした平成七年一〇月二一日付贈与契約及び同目録(三)<略>の土地についてした昭和五一年七月一五日付地上権設定契約を取り消す。

三  被告甲野花子は、別紙物件目録(一)<略>の建物についてされた別紙登記目録(二)の登記及び別紙物件目録(三)<略>の土地についてされた別紙登記目録(三)の登記の各抹消登記手続をせよ。

四  被告甲野太郎は、原告に対し、別紙物件目録(三)の土地に設定されている乙区順位番号九の根抵当権(主登記・昭和五七年七月二九日受付第二五三〇〇号)との共同担保として、同目録(一)<略>の建物について、別紙登記目録(四)<略>のとおりの根抵当権設定登記手続をせよ。

五  訴訟費用は、被告らの負担とする。

事実及び理由

一  申立て

1  原告

(一)  主位的請求

(1) 被告甲野太郎は、別紙物件目録(一)<略>の建物についてされた別紙登記目録(一)の(1)、(2)の各登記の抹消登記手続をせよ。

(2) 被告甲野花子は、別紙物件目録(一)<略>の建物についてされた別紙登記目録(二)の登記の抹消登記手続をせよ。

(3) 被告甲野太郎と被告甲野花子が別紙物件目録(三)<略>の土地についてした昭和五一年七月一五日付地上権設定契約を取り消す。

(4) 被告甲野花子は、別紙物件目録(三)<略>の土地についてされた別紙登記目録(三)の登記の抹消登記手続をせよ。

(二)  予備的請求

主文と同旨

2  被告ら

各請求棄却

二  事案の概要

1  原告は、従来、被告太郎所有の土地建物の上に根抵当権設定登記を有していたところ、被告太郎は、右建物登記がされた旧建物は、既に建て替えられて滅失しており、建替え後の新建物については、右根抵当権の効力は及んでいないとして、新建物につき表示の登記及び自己への保存登記をした上、贈与を原因として妻である被告花子に対する所有権移転登記をするとともに、右建物敷地である土地につき被告花子のために地上権を設定し、その登記をした。

原告は、被告太郎のいう新建物は、従来からある旧建物を贈改築したものに過ぎず、新旧建物の同一性は失われていないから、新建物についてされた表示の登記、所有権保存登記及び被告花子に対する所有権移転登記は、いずれも実体のない無効の登記であり、また、被告花子のためにされた地上権設定契約は原告を害するための詐害行為であるとして、これらの各登記の抹消及び右地上権設定契約の取消を求め(主位的請求)、仮に、新建物が旧建物とは同一性のない新築建物であったとすれば、新建物に根抵当権が設定されていたことになるのであり、被告花子に対する建物贈与及び地上権設定は原告を害する詐害行為であるとして、右各契約の取消、被告花子に対する各登記の抹消及び新建物に対する根抵当権設定登記を求めた(予備的請求)事案である。

本件の基本的争点は、右新建物と旧建物との同一性の有無及び新建物に対する根抵当権設定の合意の有無である。

2  基本的事実関係(争いのない事実)

(一)  被告太郎は、別紙物件目録(三)<略>の土地(以下「本件土地」という。)及び同地上の別紙物件目録(二)<略>の建物(以下「本件旧建物」という。)を所有していた。

(二)  被告太郎は、昭和四七年八月一八日付で、本件土地及び本件旧建物につき、株式会社平和相互銀行を根抵当権者とする根抵当権設定登記をした(原因・昭和四七年八月一八日設定、極度額・一二〇〇万円、債権の範囲・相互銀行取引、手形債権、小切手債権、債務者・被告太郎)。なお、この登記は、昭和五六年三月一五日に抹消された。

(三)  原告は、昭和五七年七月二九日、被告太郎と信用金庫取引契約を締結し、右契約に基く債権を担保するため、根抵当権設定契約を締結し(以下「本件根抵当権」という。)、これに基いて、同日、被告太郎から、本件土地(乙区九番、主登記・同日受付第二五三〇〇号)及び本件旧建物(乙区一一番)に根抵当権設定登記(原因・同日設定、極度額・一八〇〇万円、債権の範囲・信用金庫取引、手形債権、小切手債権、債務者・被告太郎)、以下「本件根抵当権登記」という。)を受けた。

そして、その後、原告と被告太郎は、本件根抵当権の極度額の変更合意をし、これに応じて、本件根抵当権登記は、次のとおり変更されてきた。

(1) 昭和六三年七月二六日付(同月二五日変更、付記一号) 極度額三八〇〇万円

(2) 昭和六三年一〇月二一日付(同月二〇日変更、付記二号) 極度額六〇〇〇万円

(3) 平成二年二月二一日付(同月二〇日変更、付記三号) 極度額一億円

(四)  原告は、平成三年一月一六日、朝日化成興業株式会社(以下「朝日化成」という。)との間で信用金庫取引契約を締結し(損害金の約定年一四%)、同日、被告太郎は、右信用金庫契約から生じる朝日化成の原告に対する一切の債務につき連帯保証した。

これに伴い、原告と被告太郎は、本件根抵当権の債務者につき、次のとおり変更登記をした。

平成三年一月一八日付(同月一六日変更、付記四号)

債務者 朝日化成興業株式会社

(東京都目黒区鷹番三丁目<略>)

甲野太郎(埼玉県大宮市吉野町二丁目<略>)

(五)  原告の被告太郎に対する連帯保証履行請求権

(1) 原告は、信用金庫取引契約に基いて、朝日化成に対し、次のとおり金員を貸し付けたところ、朝日化成は、平成五年二月二四日、東京手形交換所の取引停止処分を受けたので、前記信用金庫取引契約に基き、同日をもって期限の利益を喪失した。

ア 平成三年一二月一五日

三〇〇〇万円(利息・年七・二五%、平成四年二月から平成六年七月まで三〇回の元金均等分割払、残元本一七〇〇万円)

イ 平成五年一月一一日

三八四〇万円(利息・年六・八七五%、平成五年三月から平成八年五月まで四〇回[ただし、最終回は四〇万円]の元金均等分割払、残元本・三八四〇万円)

(2) また、原告は、朝日化成が約束手形(手形金額・六三六万二〇〇〇円、支払期日・平成五年二月二〇日、支払地・那珂湊市、振出地・那珂湊市、支払場所・水戸信用金庫那珂湊支店、振出日・平成四年九月二〇日、振出人・有限会社豊水食品、受取人・朝日化成、第一裏書人・朝日化成、第一被裏書人・原告)を不渡りにしたことに伴い、同社に対して、六三六万二〇〇〇円の約束手形買戻請求権を取得した。

(3) よって、朝日化成は、原告に対し、平成五年二月二四日以降、右合計六一七六万二〇〇〇円及び利息・損害金(年一四%)を支払うべき義務を負担していたのであり、被告太郎も、原告に対し同額の連帯保証債務を履行すべき義務を負担していた。

(六)  被告太郎は、平成五年三月四日付で、本件土地及び本件旧建物につき、権利者を甲野五郎とする条件付賃借権設定仮登記(原因・平成四年一二月一〇日設定(条件・平成四年一二月一〇日金銭消費貸借の債務不履行)、特約・譲渡転貸できる。)をした。

(七)  別紙物件目録(一)<略>の建物(以下「本件新建物」という。)につき、平成七年一二月五日付で、別紙登記目録(一)の(1)<略>の建物表示の登記(原因・昭和五一年七月一五日新築、以下「本件表示の登記」という。)がされた後、同目録(一)の(2)の所有権保存登記(以下「本件保存登記」という)及び同目録(二)の所有権移転登記(原因・平成七年一〇月二一日贈与、以下「本件贈与」といい、この登記を「本件贈与登記」という。)がされている。

また、本件土地について、平成八年二月一九日付で別紙登記目録(三)の地上権設定登記(原因・平成五年七月一五日設定、以下「本件地上権設定契約」といい、この登記を「本件地上権登記」という。)がされている。

3  争点に関する当事者の主張

(一)  原告

(1) 被告太郎は、昭和五一年春、本件旧建物を取り壊して、本件土地上に本件新建物を新築したとして、前記のとおり、本件新建物につき本件表示の登記及び本件所有権保存登記を経由した上、平成七年一〇月二一日、被告花子に対し本件贈与をしたとして、本件贈与登記をし、かつ、昭和五一年七月一五日には被告花子との間で、本件地上権設定契約をしたとして、本件地上権設定登記をした。

(2) 本件新旧建物の同一性

被告太郎は、昭和五一年春、本件土地上に所有していた建物(旧建物として登記されていたもの)に増改築を施して現状の建物(新建物として登記されている現況を有するもの)としたが、右増改築によって、建物の同一性は害されるものではないから、本件土地上に存在する建物は登記簿上旧建物として登記されている建物である。

したがって、原告の本件根抵当権は、本件土地及び本件旧建物の上に適法に存続している。

(3) そうすると、本件新建物を独立の建物としてされた本件表示の登記は、既に登記のある本件旧建物についてされた二重の登記であって無効であり、これを前提とする本件保存登記及び本件贈与登記は、いずれも実体のない無効の登記である。

(4) 被告太郎は、無資力であり、本件新建物が独立の建物であることを前提としてされた本件地上権設定は、原告の前記権利を害する目的で、被告らが共謀してした詐害行為であるから、原告は、本訴においてこれを取り消す。

(5) よって、原告は、本件根抵当権に基く妨害排除として、被告太郎に対し、本件表示の登記及び本件保存登記の抹消、被告花子に対し本件贈与登記の抹消を求め、かつ、詐害行為取消権に基き、被告太郎と被告花子間の本件地上権設定契約の取消し及び被告花子に対し、本件地上権登記の抹消を求める(主位的請求)。

(6) 仮に、昭和五一年春、被告太郎が従来本件土地上に所有していた建物(旧建物として登記されていたもの)を取り壊して、新たに現状の建物(新建物として登記されているもの)を新築したとすると、新旧建物に同一性は認められないことになる。

そうすると、本件根抵当権設定時において本件土地上に存在していた建物は本件新建物であるから、本件根抵当権は、本件土地及び当時本件土地上に存在していた建物、すなわち、本件新建物を目的として設定されたものというべきであるから、被告太郎は、原告に対し、本件新建物につき、本件土地と共同担保として、本件根抵当権設定登記手続をする義務がある。

(7) そして、被告太郎は、このことを認識しながら、本件新建物が未登記であり、本件根抵当権登記が設定されていないことを奇貨として、本件新建物につき本件表示の登記及び本件保存登記をした上、被告花子と共謀して、これを被告花子に贈与し(本件贈与)、その敷地利用権を確保させる目的で本件土地に地上権を設定したものである(本件地上権設定契約)。

被告太郎は、無資力であり、本件贈与及び本件地上権設定は、原告の前記本件根抵当権及び連帯保証債務履行請求債権を害する目的で、被告らが共謀してした詐害行為であるから、原告は、本訴においてこれらを取り消す。

(8) よって、原告は、詐害行為取消権に基き、被告太郎と被告花子間の本件贈与及び本件地上権設定契約の取消し及び被告花子に対し、本件贈与登記及び本件地上権登記の抹消を求め、被告太郎に対し、本件根抵当権設定契約に基き、本件新建物につき、本件土地と共同担保としての本件根抵当権の設定登記手続を求める(予備的請求)。

(二)  被告ら

原告の主張は、いずれも争う。

(1) 被告太郎は、昭和五一年春頃本件土地上の本件旧建物を取り壊し、本件新建物を新築した。したがって、本件旧建物と本件新建物との間には同一性はない。

(2) 本件新建物には、本件根抵当権は及ばない。被告太郎は、本件根抵当権設定に際し、原告の担当者に対し、本件旧建物は既に取壊し済みであり、本件新建物は未登記である旨を説明し、建物は、本件根抵当権の目的としないことを確認している。

(3) 本件旧建物は、本件根抵当権設定当時、既に消滅して存在していないのであるから、抵当権特定の原則に照らし、本件旧建物に関しては本件根抵当権設定契約は無効である。また、被告太郎が、当時既に存在した新建物について根抵当権設定を承諾したことはないのであるから、被告太郎が本件新建物につき根抵当権設定義務を負担することはない。

三  当裁判所の判断

1  本件旧建物と本件新建物との同一性について

<証拠略>及び弁論の全趣旨によると、被告太郎は、昭和四七年八月、本件土地及び地上の本件旧建物を購入してその所有者になったが、昭和五一年春に本件旧建物を取り壊し、新たに本件新建物を建築したこと(本件土地上には一棟しか建物は存しない。)、本件土地及び本件旧建物を購入した頃、前記のとおり、本件土地及び本件旧建物につき平和相互銀行を根抵当権者とする根抵当権設定登記をしていた関係上、右新築時前には、本件旧建物を既に取り壊したことを公言することをはばかり、本件旧建物の増改築の名目で建築工事を行い、本件旧建物の登記名義は、そのままにしたものであることを認めることができる。

右事実によると、本件旧建物は、本件新建物と同一性のない別個の建物というほかないから、両建物に同一性があり、したがって、本件新建物につきされた前記登記が本件旧建物のそれと二重登記の関係にあることを前提とする原告の主位的請求は、その余の点につき判断するまでもなく、理由がないものというべきである。

2  そこで、予備的請求について判断する。

(一)  <証拠略>によると、次の事実を認めることができる。

(1) 被告太郎は、昭和五七年七月、娘名義で不動産を購入する資金の融資を受けるために原告と前記信用金庫取引契約を締結し、その融資の担保として、本件土地及び地上の建物を提供することを申し入れた。その際、被告太郎は、原告の担当者に対し、本件土地及び本件旧建物の登記簿謄本を提示し、原告担当者は、これすなわち、本件土地上に本件旧建物が存在し、これを目的として根抵当権を設定することを前提として、現地を検分し、本件土地と地上の建物(当時、本件土地上に存在した建物は、本件旧建物ではなく、本件新建物であったことは、前記のとおりであるが、原告の担当者は、本件新建物の写真を目的建物の写真として、調査書の裏面に貼付している。)の担保価値を査定し、その結果として、前記のとおり、本件根抵当権設定契約が締結され、本件土地及び本件旧建物を目的として本件根抵当権登記がされた。これらの契約書面には、本件土地上の建物(すなわち、本件新建物)を表示する方法として、本件旧建物の記載が用いられているが、被告太郎は、これを認識して、その作成に応じていた。

(2) このような取扱いは、その後の前記各変更契約書の場合も同様であって、極度額の増額がされる際の目的不動産の担保価値の評価も、常に本件土地上に本件新建物が存在する前提でされている。特に、平成二年二月に極度額が一億円に変更された際には、被告太郎は、その担保価値が十分あることを示すため、本件新建物の外観のほか、室内の造作、調度まで撮影した写真多数を原告の担当者に提出している。

(3) 原告は、朝日化成が破綻した後である平成七年一〇月一二日到達の内容証明郵便で、被告太郎に対し、同年一一月三〇日までに、右債務の履行を催告し、右履行のない場合には、本件根抵当権を実行する旨を通知した。

これに対し、被告太郎は、同月一四日、東京簡易裁判所に調停を申し立て、原告に対し、債務の一部免除、支払猶予、分割弁済等についての協議を求めた。

(4) ところが、被告太郎は、右調停の平成八年三月一二日の期日において、本件旧建物は、本件根抵当権設定当時において、既に取壊し済みであったから、本件根抵当権はその限度で無効であると主張した。

そこで、原告が関係の登記簿を調査したところ、本件新建物につき本件表示の登記、本件保存登記、本件贈与登記が、本件土地につき本件地上権登記がされていることが判明した。

(二)  以上の事実関係に基づいて、原告の主張につき判断する。

(1) 本件根抵当権の目的物について

前記の事実関係によると、本件根抵当権設定当時、既に本件旧建物は取り壊されて、本件土地上に存在していなかったのであるから、本件旧建物が本件根抵当権の対象となったということはできない。

しかし、当時、被告太郎は、前記の経過で、本件旧建物の登記をそのまま維持し、原告の担当者に対して、融資及び担保権の設定の申込みをするに当たり、本件旧建物の登記簿を交付して、本件土地上に存在していた建物(すなわち、本件新建物)は、現に本件旧建物として登記してある建物であると説明し、原告の担当者も同様の認識で、本件根抵当権設定契約及び本件根抵当権登記がされたものであるから、本件根抵当権の目的として合意された本件土地上の建物は、当時本件土地上に客観的に存在していた本件新建物であったというべきである。

被告らは、被告太郎は、本件根抵当権設定に際し、原告の担当者に対し、本件旧建物は既に取壊し済みであり、本件新建物は未登記である旨を説明し、建物は、本件根抵当権の目的としないことを確認していると主張し、被告太郎の供述はこれに沿うが、右供述は、原告の担当者(証人木下勝康、同赤坂多門)の供述に反するものであり、金融機関が地上建物の存在する土地を担保として金融に応じる場合には、その担保権行使を確実なものとするために、特段の事情のない限り、両者を一括して担保権の目的とする取扱いをするものであることは、当裁判所に顕著であり、本件においてこれと異なる取扱いをしたことを窺わせる証拠は、見当たらないから、これらの事情に照らし、被告太郎の右供述は採用することはできないものというべきである。

また、被告らは、抵当権特定の原則に照らし、被告太郎は、本件新建物につき根抵当権設定義務を負担することはない、とも主張するが、本件根抵当権設置当時、本件新建物は、当事者間においては、登記簿上本件旧建物として表示されている不動産として特定認識され、かつ、本件根抵当権の目的となることが合意されていたことは前記のとおりであり、現在、それが本件新建物として特定されているのであるから、抵当権の目的物としての特定性に欠けるところはないものというべきである。

以上の次第で、被告太郎は、原告に対し、本件根抵当権設定契約に基く履行行為として、本件新建物につき、本件土地と共同担保をなすものとして、本件根抵当権設定登記手続(その内容は、別紙登記目録(四)<略>のとおりである。)をする義務があるものというべきである。

(2) 本件贈与及び本件地上権設定について

前記の事実関係に、本件表示の登記、本件保存登記、本件贈与登記及び本件地上権登記がされた経緯を総合すれば、被告太郎は、本件新建物が本件根抵当権の対象となっていることを認識しながら、本件新建物が未登記であり、これに本件根抵当権設定登記がされていないことを奇貨として、本件根抵当権の追及を免れること、すなわち、原告が被告太郎に対して有する本件根抵当権によって担保されている前記連帯保証履行請求債権を害する目的で、本件新建物につき、本件表示の登記及び本件保存登記をした上、妻である被告花子と意思を通じて、これを被告花子に贈与し(本件贈与)、その敷地利用権を確保させる目的で本件土地につき前記地上権設定契約を締結したことは明らかに推認できる。そして、弁論の全趣旨によると、当時、被告太郎は無資力であったものと認めることができる。

そうすると、本件贈与及び本件地上権設定は、原告が被告太郎に対して有する本件根抵当権によって担保されている前記連帯保証履行請求債権を害する目的でされた詐害行為というべきであり、被告花子がこれにつき善意であったと認めるべき証拠はないから、本訴において、これらの取消を求める原告の請求は、理由があるものというべきである。

また、その結果として、被告花子は、本件贈与登記及び本件地上権登記の抹消登記手続をする義務があるものというべきである。

四  以上によると、原告の主位的請求は、理由がないから棄却し、予備的請求は、正当であるから認容することとして、訴訟費用の負担につき、民訴法六四条を適用して、主文のとおり判決する。

(別紙)物件目録<略>

登記目録<略>

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